先進技術を救急救命の現場に活用する EDACの取り組みと成果

先進技術を救急救命の現場に活用する EDACの取り組みと成果

ドローンなど先進技術を活用した救急救命の実証実験に取り組む「救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会(略称:EDAC)」は、東京都内でシンポジウムを開き、1月23日に九州大学伊都キャンパス(福岡)で行われた実証実験の成果などを発表した。


講演する円城寺雄介EDAC副理事長CEO

ドローンなど先進技術が救命救急の現場を変える

 ドローンなど先進技術を活用した救急救命の実証実験に取り組む「救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会(略称:EDAC)」は、2月8日、東京都内でシンポジウムを開き、1月に九州大学伊都キャンパス(福岡)で行われた実証実験の成果などを発表した。
 EDACの円城寺雄介副理事長の報告によると今回の実験は、ドローンを活用することで救助時間が従来の3分の1ほどに短縮されたという。

シンポジウム会場で展示されたEDACが救命救急の実証実験で使用している各種ドローン=2月8日、東京都港区の機械振興会館

 実験はまず九州大学の伊都キャンパス内の中山間部を歩いていた人が体に不調をきたし、スマホから119番通報してきたという想定で行われた。現場に出動した救急隊は、患者本人から得た大まかな周辺情報とGPSによる位置情報に加え、消防指令センターの音声による指示に従うという従来の方法で捜索にあたった。これを4回繰り返し、発見までの時間を計測したところ、平均で36分かかったという。
 次に、シャツ型のウェアラブル端末を身につけた人が、端末が体の異常を指令センターに自動的に伝えてきたという設定で行った。本人からの通報は無くGPSの位置情報しかわからない状況で、救急隊の出動と同時にドローンを飛ばすことで明らかに発見までの時間が改善された。ドローンを飛ばすセッティングにかかる2分を含めても平均で15分にまで短縮された。ドローンの上空からの映像を指令センターが受信することで、広範囲の捜索ができ、救急隊に急患の的確な位置を知らせることができたからだ。

メガネ型ディスプレイの「Telepathy Walker」。ドローンの映像を指令センターから受信し、急患の位置を知らせたり、画面上に矢印などで指示をだすこともできる。

 ドローンが指令センターと救急隊の間に介在することで、ウェアラブル端末のもたらす大まかなGPS情報だけでも、発見する確率が高まったわけだ。捜索隊もドローンの飛んでいる位置で急患の位置を知ることもでき、場合によってはドローンが救急隊を誘導できる。
 また「Telepathy Walker」というメガネ型のディスプレイを救急隊員に装着させ、ドローンから撮影された映像を見せながら指示に従ってもらうと、捜索時間は平均12分まで短縮できることが分かった。
 こうした結果からドローンと先進技術を合わせて使うことで、時間との戦いとなる救急の現場は今以上に救命率が上がることは間違いないが、一方課題も持ち上がった。林の中の暗部はドローンの映像でも分かりづらいのと、ドローンの飛行時間がバッテリーの関係で短いため捜索時感に制約があることだ。
 円城寺氏によると「今後EDACではサーモカメラ(温度識別カメラ)の導入と長時間かつ広範囲に飛行できるVTOL機(固定翼機)を使い実証実験を行う」ことでより実用化に近づけたいという。

垂直離着陸ができるVTOL機(固定翼機)。ドローンに比べ長時間かつ広範囲に捜索ができるメリットがある=2月8日、東京都港区の機械振興会館

 円城寺氏はもうひとつの顔である佐賀県庁職員という立場で、これまでに救急の現場にタブレット端末を導入することで救急車による搬送時間の短縮を実現させた経緯がある。救急対応できる病院の受け入れ状況をタブレット端末で「見える化」したことが救命現場を変革させ、県として救急病院の評価にもつながげられたという。このシステムはすでに10の都道府県に導入されさらに広がりを見せている。
 EDACの取り組みも、あらゆる機器をインターネットにつなぐ「IoT」を使った新サービスの創出を目指す総務省の支援事業に採択され、これまでも熊本地震でドローンによる被災現場の状況把握や岐阜県の「いびがわマラソン」で上空からランナーの状況を見守ることで要救護者の早期発見などを進めてきた。EDACのようにさまざまな先端技術を取り入れ、常に現場で活用していくことが社会課題を解消していく鍵につながりそうだ。

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