ALS患者が初秋の鎌倉を散策 シアンの空力車でドローン空撮による〝空の観光〟も体験

ALS患者が初秋の鎌倉を散策 シアンの空力車でドローン空撮による〝空の観光〟も体験

難病のひとつALS(筋萎縮性側索硬化症)など神経難病患者7人が初秋の古都鎌倉を訪れ、長谷寺や大仏、夕日に染まる由比ガ浜などの観光スポットだけでなく、上空に飛ばしたドローンから送られる映像をヘッドマウントセットを通して“空中散策”も楽しんだ。


「みんなで創る、神経難病患者と鎌倉に行こうプロジェクト」 新たなドローン活用

 難病のひとつALS(筋萎縮性側索硬化症)など神経難病患者7人が初秋の古都鎌倉を訪れ、長谷寺や大仏、夕日に染まる由比ヶ浜などの観光スポットだけでなく、上空に飛ばしたドローンから送られてくる映像をヘッドセットマウントを通して“空中散策”も楽しんだ。他にも今回現地を訪れなかった1名は、自宅でネットを通じて参加した。
 今回開催された「みんなで創る、神経難病患者と鎌倉に行こうプロジェクト」は自身もALS患者の高野元さんが発起人となり、多くの有志サポートを得ることにより、外出もままならないALS患者が鎌倉観光を楽しみたいという思いから開催された。
 9月下旬に行われた散策ルートの下見では、鎌倉の道は、人混みだけでなく道が狭く入り組み、でこぼこした石畳、未舗装道路などが多く、呼吸器を外せないALS患者にとってはリスクも大きいなど、準備段階から心配される要因が多かったようだ。参加希望を表明していた患者たちは、そのような状況も理解した上で今回のチャレンジとなった。

長谷寺前に集合したALSなど神経難病患者と参加者は、約60名の大所帯となった=10月14日、鎌倉市長谷の長谷寺(高野元さんのフェイスブックから)

 プロジェクト当日となった10月14日は、前日の雨も上がり、気持ちのいい秋晴れとなった。日曜日ではあったが、人の混み具合も思ったほどではなく、車イスやストレッチャーとサポーター約60人の大所帯となった参加者の動きにも支障はなかったようだ。午後12時半頃に長谷寺前に集合して、長谷寺、大仏へとそれぞれが思いおもい散策に向かった。
 観光を楽しだ後、参加者は「対話の会」が開かれる長谷にある鎌倉能舞台に集まった。こちらではドローン空撮中継による体験イベントも行われ、今回参加の患者の多くがヘッドマウントセットを通してリアルタイムの空の旅を体験した。
 寺社の境内や空中からの映像を担当したのは、バーチャル観光をおこなう株式会社シアン(東京都千代田区)の空力車スタッフ。体の自由がきかない病気や障害をもった人々や高齢者に観光を、映像の遠隔伝送によってリアルタイムで楽しんでもらう活動を行っている。この映像メインにはドローンによる上空からの空撮映像を取り入れている。
 空力車のスタッフは長谷の名刹・光則寺境内をドローン(Phantom 4)を持って巡り、山門前に戻ると、ドローンを離陸させた。患者たちはヘッドマウントセットを通して光則寺について説明を聞きながら、ゴーグルに映し出される光則寺や長谷地区の空撮映像をバーチャル体験した。

ドローンの中継を行った空力車のスタッフは5名で、光則寺でドローンのフライトと鎌倉能舞台で映像伝送の受信を行った=10月14日、鎌倉市長谷の光則寺

中継はドローンを持って境内めぐりから始まった。

光則寺山門前からドローンをフライトさせる空力車のスタッフ。

 ドローンが高度を上げ、光則寺の隣に位置する長谷寺や鎌倉の海が見えると、患者の表情に変化が表れた。5分ほどの体験だったが、患者たちは初めての体験を楽しめたようだ。
 増田潤さん(45歳)は「思っていたよりもキレイな画面で、気分も悪くならなかった。画面が小さかった」と感想をサポーターを介して述べた。増田さんが画面が小さく感じたのは、車イスの頭にかかる背もたれ部分がヘッドマウントセットを前方に押したためだった。
 また多発性硬化症の安達公平さん(52歳)は「楽しかった。空を飛んでいるような感じがして、また体験したい」と記者の質問に右手を使ってイエス、ノーで答えてくれた。
 空撮映像の接続に問題が生じた場面もあったが、シアンの空力車スタッフが諦めずに対応し多くの患者が体験できた。

ヘッドマウントセットを装着する神経難病患者=10月14日、鎌倉市長谷の鎌倉能舞台

 もうひとつ行った空撮中継では、夕暮れ前の由比ヶ浜からの空撮を行い、鎌倉の海を鎌倉能舞台のスクリーンに映し出した。高度150m近くまでドローンが上がり、稲村ガ崎越しに江ノ島も映し出されると、参加者から歓声が上がった。

 高野さんは「やりたいという気持ちを周りに伝えたことから、どんどん(人の)輪が広がっていきました。所々改善点はあったと思いますが、参加者の皆さんのおかげで、まさに『みんなで創る』イベントになりました。ご参加いただいたみなさん、実行スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。私自身もこのような形でイベントが広がったことをとてもうれしく感じています」と今回のプロジェクトを成功とし「またやりたい、やります」と今後への意欲を述べた。

大仏の前で記念写真を撮る参加者=10月14日、鎌倉市長谷の高徳院(高野元さんのフェイスブックから)

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