豪雨被災の似島(広島)をまるごと空撮! 慶大・南氏、徳島大・三輪氏らの合同チーム 12月に学会で発表へ

豪雨被災の似島(広島)をまるごと空撮! 慶大・南氏、徳島大・三輪氏らの合同チーム 12月に学会で発表へ

 ドローン研究で知られる慶大の南政樹氏、徳島大学の三輪昌史氏らの合同チームは10月初旬、広島湾に浮かぶ似島(にのしま)をまるごと、ドローンで撮影した。約1900枚の写真を地図化するほか、災害時のドローン活用ガイドライン策定などに役立てる。また成果は論文にまとめ、学会で発表する方針だ。


フェリーが交通手段 山奥は今も手つかず 「不安と隣り合わせ」

 似島を訪れた合同チームは、慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表、徳島大学理工学部の三輪昌史准教授、ボランティア活動に取り組む神奈川県藤沢市に拠点を構える団体「チーム藤沢」のメンバー。地元のボランティアや、広島市南区似島地区の地域おこし協力隊らが現地案内などのサポートについた。

 似島は広島港から約3キロ南の瀬戸内海に浮かぶ人口約800人の島で、広島市南区の一部だ。広島市中心部との間に橋はかかっておらず、1日に13往復するフェリーが交通手段だ。今年7月の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)では土砂崩れが起き、島を周回する道路や、島を横切る峠道と呼ばれる道路が通れなくなり生活や通学などに支障が出た。

 被災当日、翌日は土砂の撤去や冠水した土地の水処理などの作業は島の住民や親族ら身内が夜を徹して対応。現在は元のように通行ができるが、平地がほとんどない山がちな地形なため、土砂崩れへの不安を抱えて生活を送っている。また自動車が通れる道路は限られ、被害状況の調査も難しい。実際、重機は集落には入れない。奥のほうは今も手つかずのままだ。

 合同チームは、似島地区の地域おこし協力隊や広島市社会福祉協議会災害ボランティア本部などと連絡を取り合い、ドローンによる撮影の実施を決めた。そのさい、撮影対象を、住民が生活する平地のエリアや、特定にリクエストがあるエリアに限らず、山を含めた全島をまるごと撮影することにした。島の生活には島全体の変化が影響を与える可能性が高いためで、住民や行政担当者ら必要な人が誰でも確認できるようにし、今後の土砂崩れの予測や、復興計画の立案に役立てることを念頭に置いた。

 撮影したのは10月5日。南氏があらかじめ島を網の目状にエリア分け。それを2つのエリアに分けて、合同チームが2班に分かれて撮影した。各班とも撮影にはカメラを搭載した回転翼のドローンを使用。決められたエリアを自動で飛行するようプログラミングしてフライトさせた。浮上したドローン、被写体が少しずつずれるように撮影しながら移動(オーバーラップ率は60%~80%)。雨に悩まされながら、飛行に適した隙間の時間を狙うように、午前から夕方までかけて、約1900枚の写真を撮影した。撮影した写真は真上からみたように被写体のひずみを修正したうえで1枚の地図につなぎ、災害本部に納品するほか、広く使えるよう公開する方針だ。

 撮影現場に居合わせた市立似島小学校の玉井二郎校長は「学校には、広島港からフェリーを使って通学してくる生徒もいる。通学路が通れなくなったときは学校を休みにせざるをえなかった。道路は通れるようになったが、それ以外はそのままだ。全体の状況を知ることができると助かる」と話した。

 似島地区地域おこし協力隊の船谷季弘氏も、「発災から3か月がすぎて生活に必要な道路は元通りになっているが、いつまた土砂崩れが起きても不思議ではないという不安と隣わせの生活だ。現状を知ることができると、住民の意識づけにも、対策を練るうえでも、だいぶ違うだろう」とドローンによる撮影に期待を寄せた。

似島では土砂崩れの爪痕はいまも残る場所がそこここで見られる

フライトを前に、入念に打ち合わせをする慶大・南氏、徳島大・三輪氏らの合同チーム

SNSグループに研究者らが集結 著作権、空撮手続き、地図の所在・・・課題も知恵もシェア

 合同チームの活動は、7月の西日本豪雨後に、意見交換のために作られたSNS上のグループがベースだ。

 SNSフループは、被災地でボランティア活動中だった「チーム藤沢」のリーダー(本人の希望で、ここでは「ボランティアおじさんS氏」とする)が、現地で活動する支援団体や生活者が二次災害にあうことを防ぐうえでも、発災後の地図が必要だと訴えたことがきっかけでスタート。リーダーS氏はそれまでの支援活動を通じ、「活動地域そのものが、二次災害の危険が迫る場所であれば大変危険だ。ボランティアセンターや、そこで活動するボランティアのメンバー、地元の生活者に対して、正確な情報を伝えることが欠かせない」と、その重要性を痛感していた。

 リーダーS氏の呼びかけに応じて、慶大ドローン社会共創コンソーシアムの南氏、徳島大の三輪氏、青山学院大学地球社会共生学部教授で「災害ドローン救援隊、DRONEBIRD」の隊長でもある古橋大地氏、同副隊長の藤井十章氏(土地家屋調査士)、同西日本支部の山中匠氏(土地家屋調査士)、国立研究開発法人防災科学技術研究所センター長の臼田裕一郎氏、チーム藤沢でS氏とともに活動する檜森晃治氏、広島市幹部、ドローン関連企業の経営者、幹部らが、招待、誘い合いなどを経て相次いでグループに参加した。

 グループには、南氏、古橋氏らDRONEBIRDのメンバー、「チーム藤沢」のように、発災直後から広島市、呉市、坂町、岡山県倉敷市など被災現場で空撮し、写真などを現場に提供する活動を進めてきたメンバーもいて、それぞれの経験を照合しあうなど活発な議論が展開された。

 意見交換の中では、▽発災後の地図の存在を行政が知らないケース▽地図はあっても著作権を気にして使えないなど使用上ネックになる要素があるケース▽地図の解像度が低く役立ちにくいケース▽ドローンの飛行許可の取得に関するハードル▽そもそも地図が災害対策に役立つことに気づかないケース▽データはあっても担当者が扱えないケースーーーなど、いくつかの課題が洗い出された。

 DRONEBIRD代表の古橋氏は「地図はリアルタイムで書き換えられる。災害があれば発災後の地図をみれば、どこの道路が土砂に埋もれていないのか、など救援に入るためのルートもわかるが役に立つ。その書き換えにドローンが大きな役割を果たす。まずはここから知ってほしい」と話す。

 なお古橋氏らDRONEBIRDは合同チームが撮影した画像データを最新地図に反映させる作業を、学生や外部協力者も動員して実施した。

 似島の全島撮影は、ドローンで得られたデータの活用は災害対策に有効であること、環境を整備すればさらに有効活用できる可能性があること、ドローンそのものの利用が広がることで災害対策の可能性を広げること、などを改めて気づかせた。

 これまでの一連の取り組みについて、慶大・南氏らが中心となって論文としてとりまとめ、12月に大阪で開催される「第19回SICEシステムインテグレーション部門講演会(SI2018)」https://www.rsj.or.jp/info/robotnews/11170/
で発表する方向だ。

撮影エリアでドローンをフライトさせる徳島大・三輪昌史氏(左)の班

撮影エリアでフライトさせる慶大・南政樹氏(左)の班

撮影の様子を地元の市民も興味深そうに見物。ドローンをフライトさせると空を見上げた

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