国内初!! DJI AGRUS MG-1Pが複数同時自律飛行で農薬散布に成功

国内初!! DJI AGRUS MG-1Pが複数同時自律飛行で農薬散布に成功

2018年6月19日。株式会社スカイシーカー(東京都)は、DJI JAPANと協力して千葉県香取市のさつまいも畑で、DJI AGRUS MG-1Pによる農薬散布の実証実験を行い、自律制御による編隊飛行に成功した。(田中亘)


2台のMG-1Pによる自律飛行で1.7haのさつまいも畑に同時に農薬を散布

さつまいも畑に薬剤に見立てた水を自律飛行で散布するAGRUS MG-1

 DJI AGRUS MG-1による農薬散布の実証実験は、2台の機体を自律制御で同時に飛行させて、約1.7haのさつまいも畑に農薬に見立てた水を散布した。国内初となる実証実験を取り仕切ったスカイシーカーは、一年前から千葉県の農家とドローンによる農薬散布の勉強会を行ってきた。今回は、千葉県の農業組合法人和郷園の協力を得て、農林水産省からは大臣官房兼生産局兼政策統括官の鈴木良典生産振興審議官や、生産局の秋葉一彦技術普及課長が参加し、県外からも農業関係者が訪れて実証実験を実現した。

実証実験の開催にあたり挨拶する農林水産省 大臣官房兼生産局兼政策統括官 鈴木良典生産振興審議官(中央)

 DJI JAPANでは、この日の実証実験のために国内未発売のAGRUS MG-1Pという最新モデルを用意した。MG-1PはRTKアンテナを2本装備し、高精度な自律飛行を可能にする。しかし、今回の実験ではRTKは利用せずにPC版のGS PROを利用した。MG-1Pによる自律飛行では、最初にPhantom 4を使って対象となる畑の空撮マップを作成し、そのデータをGS PROで処理してMG-1に搭載する。この手順を踏むことで、常に最新の空撮マップによる自律飛行が可能になる。

畑の地図を撮影するために飛行するPhantom 4

 実験当日は、DJIのスタッフがすでに撮影を終えて、GS PROで読み取った空撮マップを元に、MG-1が自律飛行するために必要なデータをMicro SDカードに保存し機体にセットしていた。そのため、Phantom 4の飛行は不要だったが、視察に訪れた関係者のためにDJIのスタッフは模擬的に飛行デモンストレーションを行った。DJIによれば、約1.7haのさつまいも畑であれば、高度60mから約3〜4分で空撮は完了するという。

自律飛行のアプリについて説明するDJIのスタッフ

1.7haのさつまいも畑に高度1.5mから農薬を散布

 MG-1による自律飛行は、コントローラーによる操作が不要で、アプリの画面からスタートを指示する。一人のオペレーターで最大6台までのMG-1を自律制御できるという。実証実験では、DJIのスタッフ一名が緊急時のためにコントローラーを手にしたままアプリで命令を実行し、二名のスタッフが手分けしてさつまいも畑の端で飛行の状況を監視した。準備を整えた2台のMG-1に対して、DJIのオペレーターが飛行の命令を送信すると、ほぼ同時に2台が離陸してプログラムされた空域への飛行を開始した。

 MG-1による自律飛行は、約1.5mの高さから農薬に見立てた水を散布し、さつまいも畑の端まで移動すると自動的にコースを変えて、散布するノズルの吹き出し口を切り替える。今回の実験機には、障害物を検知するレーダーも取り付けられていたので、飛行実験の途中で一台が畑の端にある樹木を障害物と認識して自動的に停止してホバリングする様子も確認できた。障害物で機体が停止したときには、手動で位置を移動させて自律飛行を継続させられる。DJIでは、レーダーの検知性能を確認してもらうために、自律飛行後に一台のMG-1を手動で操縦して、障害物に見立てた電柱の手前で自動的に停止する様子も紹介した。

レーダーが電柱を障害物として検出してMG-1が停止する

散布の効果を確認するための実験も実施

 自律飛行と障害物の検知に続いて、DJIではMG-1の散布効果を参加者に確認してもらうために、さつまいも畑の中に試験紙のついた棒をセットし、その上から色水を散布する実験も行った。飛行は手動で行われ、約1.5mの高さから色水を散布した試験紙には、薄っすらと青い色が付着した。実証実験を取り仕切ったスカイシーカーの佐々木政聡代表取締役によれば、国内の農薬散布ドローンの多くは水稲を対象にした機種と薬剤が中心で、露地野菜を中心に栽培している千葉県の農家にとっては、農作物に対する散布効果や薬剤の種類などの情報が不足しているという。そのため、こうした実験を繰り返すことで、ドローンの高度や速度による散布効果の実証データを検証し、農作物に適した農薬の選定や開発に結び付けたい狙いがある。

畑に試験紙のついた棒をセットするDJIのスタッフ

タンクに色水を注入するDJIのスタッフ

薬液に見立てた色水を試験紙に散布するMG-1

試験紙に色水が散布されたか確認

ドローンの自律飛行による農薬散布の実現に向けて取り組む

実証実験の後に開かれた意見交換会

 実証実験の終了後には、会場を移して参加者と視察者による意見交換会が開催された。挨拶に立った鈴木生産振興審議官は「自動飛行の方が正確にドローンを飛ばせる」と評価しつつ「安全性の確保が重要」と指摘する。しかし、国内農業では担い手の不足という課題もあり、ドローンによる農薬散布の効率化や自動化は、生産性の向上や改善への効果が期待できる。そのため、農林水産省としてもスピード感を持って安全で確実なドローンの自律飛行による農薬散布の実現に取り組んでいく考えを示した。
 意見交換会では、ドローンの散布性能に見合った農薬の種類が少ない現状が指摘された。MG-1では10Lのタンクで約10〜15分の飛行が可能なので、一度のフライトで約1haの畑に農薬を散布できる。この散布性能に見合った希釈濃度の農薬の開発や、対象となる農作物に適合した薬剤の種類を増やす必要がある。それに対して、農薬メーカーの参加者からは、現在の農薬登録制度では、ドローンに適した農薬を短期間で開発するのが困難だという意見が出た。また、農家からはMG-1の価格や飛行のために必要なライセンスなどの質問がDJIのスタッフに寄せられた。
 スカイシーカーの佐々木氏は、今後も千葉県の農家と協力してドローンによる農薬散布の実験や検証を重ねていくとともに、「一連の活動で得られたノウハウを教育パッケージにして、全国の農家への導入を支援していきたいと考えています」と語った。

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