大人向けのSTEMワークショップ 栄光グループが保護者、教員を対象に開催

大人向けのSTEMワークショップ 栄光グループが保護者、教員を対象に開催

 ドローン関係者の間でも話題になることが多い、科学技術教育を差す「STEM(ステム)教育」は、学習者の身近にいる大人の関わりが学習効果に大きな影響を与えると言われる。学習塾系の栄光ロボットアカデミーと栄光サイエンスラボが、小学生の教員、保護者向けに「STEM教育体感ワークショップ」を開いた。


レゴ教材「WeDo」を使ったロボット体験と、酸化・還元の実験

 ワークショップが行われたのは6月9日と10日。このうち9日の午前に会場を取材した。参加したのは小学生を持つ保護者8人と教員1人の9人だ。「STEMという言葉は聞くけど内容をもっと知りたい」「家庭でどう接したらいいかを知りたい」が、動機だという。卓上にはレゴの教材や、タブレット端末iPadが置いてある。これを使って実験をするのだろうと推測する。後半は酸化と還元の実験であることもアナウンスされている。
 しかしすぐには実験には入らない。講師をつとめたミクパンダさん(栄光ロボットアカデミー東京スカイツリータウン校室長、磯野未来さん)は、参加者全員に、卓上に用意された紙に流れ星、月、木の絵を書くよう求めた。参加者が順番に書き終えた絵を見せ合うと、ミクパンダさんは「流れ星は五角形になっていますね。線をつけて流れているように描いておられる方が多いですね。月は満月の方、三日月の方、いろいろありますね。木もそれぞれの形がありますね」と講評する。「ここでは、どんな答えもあっていい。どれかひとつが正解なのではない、という問いがあることを知ってほしい、と思います」と付け加えた。
 参加者全員が大きくうなずいた。
 レゴを使うのはここからだ。
 レゴのロボティクス教材、「WeDo」のキットの箱を開けて、所定の図面を見ながら、中にある数あるパーツのいくつかを選び、それを使って、モーターとゴムを使ったクルマを組み立てる。次にiPadで「WeDo」の専用ソフトを使って、プログラミングをする。画面に表示されている「モーターをまわす」「止める」など、いくつかの指示をするブロックを並べるだけだ。
 そこまでできると、ミクパンダさんが質問をする。

レゴの教材をつかってクルマを組み立てる。このプロセスも楽しさを味わえるかどうかの重要なカギになる

ミクパンダ(磯野未来)さん(中央、オレンジのシャツ)は、好奇心をかきたてながら、STEM教育にとって大切な要素が伝わるよう工夫を凝らした指導テクニックを披露し、参加者の心をつかんだ

問いかけて、発案させると、楽しくなり、理解が深まる

 「今、ついている大きいタイヤを、キットに入っている別の小さいタイヤを交換して、それぞれ2秒走らせたら、どっちが遠くまで行くと思いますか?」
 参加者の多くが「大きなほう」と回答する。
 「では、それを確かめてみましょう。どう確かめてみますか」。この問いには「2秒走らせて距離を比べる」という声があがる。
 「では、どうやって比べましょうか」。「スタート位置を決めてそこに線をひいて、それぞれの走った距離を印をつけて比べる」などの声があがる。
 「それではそれぞれのやりかたで、やってみましょう」。実験がはじまる。iPadとクルマをバインドしてからタブレット上で指示を出すと、クルマはその通りに動く。実験をしてすぐに結果が出る。大方の予想通り、大きいタイヤをつけたクルマが距離を稼いだ。
 問いはさらに続く。
 「では、どのように比べたか、教えてください」
 参加者からは、スタート位置に印をつけ停止位置までの距離を測定した、2台それぞれの走行距離をキットに入っているブロックの長さで示した、配布資料のへりに距離を刻みこんだ、など9人9様の比べかたが発表され、それぞれの方法が発表されるために、ほかの参加者が感心する様子がみられた。
 ここまで見学していて、気づいたことは、講師の講師の声のかけ方に方法論がつまっていることだ。問いをたて、参加者に予想させ、確認方法を考えさせ、それを実践させ、発表させる。
 「大切なのは子供たちの発案を促すことです。大人が方法を教えることはできますが、方法の段階から子供たちに考えさせると、子供たちはより深く考えるようになり、より興味をもってもらえることが分かっています。ただし大人の役割も大切です。たとえば子供たちが発案した比べる方法をよく見てあげて、その方法で正確に比べられるのかどうかを見極める、などの対応が必要です。初期条件が違うなど比較に不適切な方法を選択していた場合なら、その選択が不適切であることについて、子供たち自身が気づくための問いかけをしていくことが重要になります」(ミクパンダさん)。
 この頃になると、初対面同士の参加者は、いつの間にか、お互いの手元や様子をうかがい、声をかけあうようになっている。表情にも笑顔が浮かんでいる。発表を促すことで参加者同士の理解が深まり、交流が進む仕掛けも盛り込まれていたことに気づく。
 ワークショップの後半は、ブドウ糖、消石灰、エチレンブルー液、ぬるま湯を使って、「酸化と還元」に進む。ここでも、色がかわるかどうか、なぜそう思うか、などの問いで参加者がどんどん引き込まれていく様子が傍から見ていて明らかだ。
 ワークショップは2時間程度。最後に参加者が一人ずつ感想を述べた。ジュイさんは、「楽しかった。とくに酸化と還元では、同じ素材を使っているのに、熱が違うと反応が違うことがわかった。予想と異なる結果が出たときに、想定したことと異なる条件が何かを考えるきっかけになると思った」、ナカムラさんは、「分かっていても目の前でそれが起こるとより深く考えるようになる」、おおたさんは「当たり前だと思っていることがその通りに起きたときに、その理由を考えるかどうかでおもしろくなるし、深い理解になる」と、それぞれ述べた。
 「ナカムラさん」「ジュイさん」、といった名前は、ワークショップの冒頭、参加者全員が「呼ばれたい名前」を自己申告していた。これも、自分の意見を表明しやすくする環境づくりとして行われたひとつの工夫だ。そのほか、さかたさん、ほんまさん、あべさん、モーリーさん、なっちゃんさん、やまちゃんさん、が参加していた。全員が「楽しかった」と答えた。
 前半のレゴの講師を務めたミクパンダさんは、保護者、教員向けのワークショップを実施した理由について「STEMの重要性は少しずつ知られていますが、子供たちの力を伸ばすにはその環境が大きく影響します。子供たちにどう接したらいいか、どう声をかけたらいいか。子供の環境に影響を与える大人に、それを考えてもらいたい。そう思って企画しました。今後、さらにブラッシュアップさせていきたい」と話した。

酸化と還元の実験風景。結果が予想通りでも目の当たりにすると実感がわく。条件を変えるとどうなるか、という次の問いを生み出し、好奇心が増える循環が生まれる

まるで自分が学習者になったような真剣な表情

参加者の発表に拍手が起こる。絶妙な会場運びもあって、参加者同士があっというまに打ち解けた

「時代の求める教育をこれからも追求」

 STEM教育は、先端技術の担い手確保のために教育マーケット内で台頭してきた考え方で、米国が発祥だ。科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学の英語表記の頭文字をつなげた言葉。「ART」が入って「STEAM」、「ROBOTICS」が加わり「STREAM」と呼ばれることもあるなど、派生系もいくつかある。
 主催したのは学習塾大手、栄光ゼミナール系の理数教育を展開する、栄光ロボットアカデミーと、栄光サイエンスラボだ。栄光ゼミナールは、株式会社ZEホールディングス(静岡県)のグループ会社、株式会社栄光(東京)が運営している。
 この日のワークショップを統括した栄光事業開発1部ロボットアカデミー課の富田一央課長代理は、「われわれは時代の移り変わりにあわせて、求められている教育がどういうものかを考えています。これからも常に、どんなものが求められているのかという視点を持ち開発していきたい」と話している。

栄光ロボットアカデミー:http://www.eikoh-robot-academy.com/
栄光サイエンスラボ:http://www.eikoh-sciencelabo.com/

会場風景。この日のワークショップの参加者は、全員が「楽しかった」と述べた

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