機体のおしゃれ「DroneWraps」の作業現場潜入記 マイスター三原さんのプロの腕

機体のおしゃれ「DroneWraps」の作業現場潜入記 マイスター三原さんのプロの腕

 ドローンの機体にカラーフィルムを貼ってカスタマイズを楽しむユーザーが増えている。この市場をリードし、業界の第一人者からも評価を得ているのが株式会社ダイヤサービス(千葉市)のラッピングサービス「DroneWraps」で、現在も注文が全国から相次いでいるという。同社の工房「DRONE GARAGE」に潜入した。


フィルムパーツの型にも独自ノウハウ あちこちに潜む〝ユーザー目線〟

 ぼくは手先が器用だ。
 なにしろ幼稚園のころ、折り紙はクラスの中で一番上手だとほめられたことは今も忘れないし、実際、鶴やオルガン、ちょうちん、イヌ、イス、テーブルなど基本的なやつは、本を見なくても短時間で作れる。だから折れ線の多いドローンの機体ラッピングは、ぼくに向いている。ドローンタイムズをクビになったら、きっとこれが天職となるに違いない。ぼくの将来を左右する取材になるかもしれない、と、最終日の「国際ドローン展」を抜け出し、いざ千葉市内の工房に向かった。
 出迎えてくれたのは、同社の女性マイスター、三原彩虹(みはら・あやこ)さん。丁寧な仕事ぶりがユーザーの支持を受け、〝三原仕上げ〟のリクエストが利用者から舞い込むといううわさだ。
 使うのは高級車にも使う米3M社製のカーラッピング用フィルム。この工房は、3Mから4ーStar(「★★★★」)の認定を受けた、メーカーから腕前が保証された工房だ。
 3Mのフィルムは光沢、色、柄などの組み合わせで無数にある。三原さんが「どの色にしますか」尋ねてくれたので、数ある色見本の中から「マットアップルグリーン」という5月の新緑の色(またはアマガエルの色)にした。これからDJIのMavic Proを、おなじみのグレーから変身させる。
 まずはマットアップルグリーンのフィルムをパーツごとにカットする。
 機体は立体、フィルムは平面。機体を覆うには、平面のフィルムをいくつかのパーツに分ける必要がある。パーツの型は、工房が図面をあらかじめデータ化してある。したがって、PCの電源を入れ、カッターにフィルムをセットしたら、キーを押せばカッターがフィルムの台紙の上の、フィルム部分だけに切れ目を入れていく。
 5分ほどでカットは終了。この間、作業は機械に任せっきりだ。
 フィルムは四角いまま。台紙のうえのフィルムに切れ目がはいっている。
 なお、「あらかじめデータ化してある」と書いたが、実はここが、この工房の独自のノウハウのひとつだ。ドローンのメーカーは、フィルムのパーツを教えてくれるわけじゃない。機体ごとにパーツをどう展開するのが最適か、といったところからパーツのカタチ、寸法を割り出して〝パーツの図面〟を作った。
 Mavic Proのほか、Mavic Platinum 、Mavic Air,Phantom4 Pro、Phantom4、Phantom4Adv、SPARKもすでに図面化してあり、対応できる。
 代表の戸出智祐さんは型づくりについて「マスキングテープを使うなどして最適な大きさを試行錯誤して型を作った。大きさを決めるさいには、実際に使うさいに手にひっかかりやすくないかどうかなど、ユーザーの使い勝手を考慮した」という。ユーザーの気持ちになって設計しているところが、この工房が支持される理由に違いない。
 「5分ほどでカット終了」と書いたが、この速度もカットの精度と、手作業でフィルムをはがすさいの仕上りを考慮したうえでたどりついた速度だ。作業をすばやくすませるために、スピードをあげることも可能だが、ここでも戸出代表は「仕上がりとの見合いが重要なので速ければいいわけではないんです」という。
 さて、フィルムのカットが終わった。ここからが手作業だ。

フィルムのパーツの型。ここにもノウハウがつまっている

ただいまカット中

カット終了。フィルムを機械からはずす

マイスター・三原さんの丁寧&リズミカルな作業に脱帽

 マイスター、三原さんの手さばきを間近で見る機会がやってきた。
 そう思ったら、三原さんに「では、やってみましょうか」とスッとカットしおえたフィルムを手渡された。そうか、体験できるのか。よし。冒頭にも書いたが、僕は手先は器用だ。力量をアピールするチャンスだ。しかもぼくは、本番に強い。おそらく三原さんは、ぼくを十分な戦力みなると認めざるを得ないだろう。余計なことを考えて、フィルムを手にとった。
 フィルムは、表面を光にあてると、切り込みが見える。「ではバッテリーのところからはってみましょう。ここをはがしてみてください」。笑顔の三原さんに促され、その気になって、フィルムを台紙からはがそうとする。
 「あ、その前に、機体をダッシしてください」
 ダッシ?
 「はい、機体の油分を取り除いておかないとキレイに付かないんです」
 なるほど、脱脂か。ラッピングの購入者には、脱脂剤がセットで付いてくるという。ここではスプレー缶から脱脂材を布につけて、機体を拭き取った。準備完了だ。よし、取りかかるぞ。慎重に、慎重に。
 パーツの角を、バッテリーの角にあわせる。次にフィルムの角から延びる直線を、バッテリーのヘリにはわせて、直線同士を重ねる。フィルムの位置が決まった。あとは残りのフィルムをはりあわせたところから乗せていけばいいはずだ。「上手ですね」(三原さん)。そう!だから言ったのだ。ぼくは器用だ。
 ところが。
 フィルムを本体にのせてみたら、最初にあわせた角と、対角線の角が微妙にあわない。どこかで微妙に曲がったか。
 「あの、合わないんですけど」
 「これぐらいは大丈夫ですよ」
 なぐさめてもらったのがなさけない。どうにか1枚、はりおえた。ヘリに少しのズレがある。「初めてにしては上手です」。そうか。「初めてにしては」か。
 この時点でふたつのことを決めた。
 ひとつは、あとを三原さんに託すこと。
 もうひとつは、「器用だから、採用すべきである」とは申し出ないことだ。
 今度こそ、三原さんの腕前を堪能することにする。
 機体を持ち、そこにフィルムの端をスッとおき、ヘリにあわせ、残りを乗せる。手順はぼくと同じだ。それでも、反対側のへりの部分もぴったりと機体に乗る。
 「ここのヘリのところ、使っているうちにはがれやすいところなのいで、ひっかかりがないかどうか注意しないといけないんです」
 「機体が複雑に折れている部分はギュっとおして、密着させればうまくはれます」
 「ここ、フィルムのまん中に丸くくり抜くところは、カッターの刃先でひっかければうまくくりぬけます」
 笑顔で説明しながら、精密機械のように手が動く。丁寧で、リズミカルだ。なにより楽しそうだ。スッとはって、スッとフィルムを重ねる。その作業に見とれること30分。最後にドライヤーで圧着して、見事な新緑色の機体ができあがった。戸出代表もプロポを新緑色に仕上げた。
 ぼくが試しにはったバッテリーはあくまでも記念品扱いとなった。ただ、それでも愛着はあるし、多少、初心者感はあるものの、衣替えの終わった機体、プロポは、目に鮮やかで美しい。
 注文が増えている理由が分かった気がした。

作業開始。左が戸出代表、左が三原さん。真剣な表情で一心不乱に取り組んでいるようにみえるが、実際には会話も多く明るい職場だ

フィルムのパーツを台紙からはがす

スイッチ類などのためにくりぬかなければいけないところは、カッターの刃先を使う

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