〝そら楽プロジェクト〟を世界No.1に  楽天が描くドローン物流の展望

〝そら楽プロジェクト〟を世界No.1に  楽天が描くドローン物流の展望

ビッグサイトで開催された国際物流総合展のロジスティクス講演会に登壇した楽天の向井秀明シニアマネージャーは、「ゴルフ場での物資搬送プロジェクトの紹介および今後の展望」と題した講演を行い、同社のドローン物流の取り組みを説明した。(田中亘)


ドローン物流が注目される背景とは

物流業界は、再配達の非効率性や交通渋滞にドライバーの労働力不足という課題を抱えている。この課題を解決するために、IT企業を中心に物流業界では新たな取り組みが行われている。その中で、革新的なソリューションとしてドローン物流に注目が集まっている。海外ではすでに、米国AmazonのPrimeAir構想や、欧州DHLの拠点間ドローン搬送、そして中国のJD.COMによる農村部向けサービスなど、ドローンを活用する動きが広がっている。こうした背景から、楽天では「そら楽」というドローン物流サービスに乗り出した。同社の向井氏は、その特長を次のように話す。
「そら楽は、世界で初めてドローン物流サービスを一般に提供しました。完全な自律飛行によるドローンを使った目視外飛行で運用し、配送サービスに必要なスマートフォン用の専用アプリも開発しました」
そら楽で使われたドローンは、楽天が出資した自律制御システム研究所との共同開発による国産機。同社の三木谷氏が「天空」と命名した。国産技術にこだわった理由を向井氏は、「フライトデータをすべて国内のサーバーに安全に保存できる点」だったと話す。外国産のオートパイロットを使うと、フライトデータがインターネットなどを介して、海外に流出するリスクがあったという。

楽天株式会社
新サービス開発カンパニー 事業企画部
ジェネラルマネージャー 兼 ドローンプロジェクト推進課
シニアマネージャー
向井秀明氏

第一弾のプロジェクトはゴルフ場を活用した配送サービス

楽天のドローン「天空」は、15インチのプロペラを6枚備えたヘキサコプター。全幅は約1300mmで、最大積載量が約2.0kg。飛行可能な距離は約5km。GPSによる位置情報だけではなく、画像認識とビーコン技術を組み合わせて、より正確にドロップポイントに着地する。機体には、荷物を自動的にリリースする機構を備え、目的地で荷物をドロップしたら、基地へ帰還する。
「今年の5月から6月までの一ヶ月間、千葉県のゴルフ場で約100種類の商品を自律飛行で配送するプロジェクトを実施しました」と向井氏。
ゴルフ場は、非人口密集地の私有地なので、規制対策が容易で、ゴルファーのニーズも明確。そのため、サービスの実証実験には最適な場所だという。ゴルフ場での配送サービスに関する技術とオペレーションのノウハウを蓄積すれば、将来的には全国に3,000以上ある同様の施設に拡大することも可能になる。
「安全な運航のために、上空と受取所の風速を常に観測して、飛行に困難な風速が計測されたときには、危険を回避するプログラムも導入しました。また、受取所の状況をカメラで監視し、ドローンが離着陸するときには、地上に設置したスピーカーから音声アナウンスを流して、安全確認を徹底しました」と向井氏。
ドローンの操作は、ソフトウェアによって完全な自動化を実現している。実際のドローン配送では、スタッフが配送品を専用のボックスに入れてセットしたら、タブレットの操作画面にある離陸ボタンをタッチするだけで、あとは全自動で配送が完了する。
「第一弾のプロジェクトから得られた課題は、より高い耐風性に、雨天でも飛行できる防水性、そして緊急時の安全機構のさらなる強化でした。また、完全な自律飛行による低リスクのドローン配送にとって、日給の高額な操縦者の確保が、コスト面での課題となっています」と向井氏。

ドローン「天空」が荷物を届ける様子

そら楽が取り組むドローン物流の未来ビジョン

楽天では、ゴルフ場での配送サービスに加えて、物流困難地域に住む人々を支援する取り組みや、緊急時のインフラ構築などにドローン物流を活用できると考えている。しかし、現状では物流用ドローンのための専用空域はなく、ホビー用や空撮用など多様なドローンが混在している。そのため、多数のドローンによる編隊飛行での配送は困難だ。
「ドローン物流に最適化された専用の空域を定めて、一定の要件を満たす事業者がその空域を利用して、スムーズなドローン配送を実現するべきだと思います」と向井氏は提言する。
高度30m以上から高度150m以下の空域は、トラックや有人航空機による物流の範囲外にあり、そこには鳥と電波しか飛んでいない。その未開拓の空域を有効に活用することで、低コストで低リソースな物流の実現につながるという。
「空を活用することで、道路という既存インフラに制限されずに、物流に新たな可能性が生まれます。そのメリットは、日本国内だけではなく発展途上国にとっても、新たな物流サービスにつながります」と向井氏。
楽天では、国内での実証実験から得られた技術や知見を元に、そら楽のサービスを充実させていくだけではなく、将来的に発展途上国への展開も睨んでいる。
「ITとドローンを活用した物流サービスは、日本の製造業とソフトウェア産業の力を結集して、世界に通用するビジネスモデルを構築できると信じています。そら楽のプロジェクトを今後も発展させていくことで、世界でNo.1になれるドローン産業を日本から生み出したいと思っています」と向井氏は訴える。

楽天が描く未来のドローン物流のイメージ図

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