商用ドローン はじめの一歩 第3回 「産業用途のドローンの違いを知る」

商用ドローン はじめの一歩 第3回 「産業用途のドローンの違いを知る」

空撮という用途によって、ドローンはホビー用途だけではなく、映像産業を中心にビジネスでの利用が広がった。さらに、カメラを搭載して撮影できるということは、高い所を調査する用途に最適で、関連した商用ドローンも誕生している。


高所の安全確認や測量にリモートセンシング

ドローンの産業用途の違いや広がりを知るには、今後のロードマップを理解しておくといいだろう。現在のドローンは、このロードマップのフェーズ1から2の間にある。
(ドローンのロードマップ.jpg)
フェーズ1は、安全基本飛行という段階で、目視による日中の飛行が基本であり、その飛行空域は人口が密集していない安全な場所に限られる。この条件で利用できるドローンの産業といえば、空撮や測量に農業となる。空撮では、高性能なカメラを搭載して本格的な映像作品を撮影できるドローンも製品化されている。また、測量の分野でもドローンで空撮した映像から地形を計測したり分析できるサービスも始まっている。そして農業の分野では、成育状況を空から確認したり、土壌の分析や灌水状態の把握に、害虫や病気の早期発見に肥料の投下など、より精密な農法が可能になる。
次の段階となるフェーズ2では、安全な拡張飛行を目指している。目視による飛行が基本だが、フェーズ2では夜間飛行も可能になる。また空域は人口が密集していない場所に限られるものの、センサー技術を強化することで、建物の近くでの飛行が可能になる。その結果、高所の建造物や橋などの点検や警備などに利用できる。この分野では、すでにセコムなどの警備会社が独自に開発したドローンによる警備サービスを開始している。NTT東日本でもドローンによる電波塔の点検を数年前から実施している。その他にも、実証実験の段階だがコンクリート施設の打音検査などが行われている。現在は足場を組んで検査している現場であれば、検査用ドローンで対応できる可能性は高い。国内の橋梁や輸送インフラの老朽化が問題視される中にあって、ドローンによる非破壊検査という用途は、大きな産業になるという期待も高い。こうした特殊な用途のドローンになると、その機体も特別な設計になる。カメラよりも重くて複雑な構造の検査機器を搭載した飛行が求められる。そのため、産業用途のドローンは、その多くが6~8枚プロペラの機体を採用している。プロペラの枚数が多いほど、重い機材を浮上させられるからだ。また、4枚プロペラに比べて、プロペラが故障したときに安全に着陸できる。そして、搭載する飛行用のセンサーも、GPSだけではなく、赤外線や画像センサーなど、目的に合わせて追加される。そのためフェーズ2分野のドローンは、まだ過渡期にあり、産業の用途に合わせて開発と実験が繰り替えされている段階でもある。

空輸を目指すフェーズ3へと進化するドローン

拡張飛行という段階になるフェーズ3でのドローンは、操縦用のコントローラーを持った人の目視外でも、電波が届く範囲内での遠隔飛行を可能にする。その飛行空域は、一般の航空機の空域とは分離される。このフェーズ3が可能になると、空を使った輸送、つまり空輸が実現する。ドローンの産業利用にとって、この空輸は大きなビジネスの可能性を秘めている。日本でもニュースになったアマゾンのPrime Airというドローンによる配送サービスの構想は、2013年の12月に発表されている。その当時は、多くの人たちがその実現性を疑っていたかもしれない。しかし、2016年になった現在、その可能性を疑う人は少ない。2~3年の間に、ドローンの飛行技術が進化し、アマゾンも構想の実現に向けた機体の開発やサービスの整備を着実に推進してきた。実際に、Prime Airのような空輸サービスを実現しようとすれば、フェーズ2の段階で開発されているドローンに対して、さらなる高度な機体設計とIT技術が求められる。例えば、空輸のためには多様な形の箱を搭載して配送先にドロップできる機構が必須となる。もちろん、ある程度の重量を運べる飛行能力と、サービスを提供する地域を往復できるバッテリー性能も必要になる。さらに、ピッキングからフライト、デリバリーから帰還まで、すべてを自動化できる高度なIT技術も開発しなければならない。アマゾンでは、これらの課題をどのように解決するのかを動画で紹介している。YouTubeに登録されているAmazon Prime Airのサービスのイメージを紹介した動画では、空輸のために専用の機体を設計し、オンラインでの注文と連動して、ほぼ自動で目的地に空輸する様子が映し出されている。
(https://www.youtube.com/watch?v=MXo_d6tNWuY)
(primeair2.jpg)
アマゾンの他にも、米国のDHLも独自の空輸サービスの構想を発表している。また、アフリカではベンチャー企業が緊急用の医療関連品を空輸するサービスを計画している。これらのサービスも、機会があれば改めて紹介したい。いずにしても、フェーズ3の段階に入ったドローンは、空輸による新たな産業の誕生を予見させる。日本でも、千葉での実証実験の開始など、世界の動きに乗り遅れないように取り組みを加速させている。

超拡張飛行へと発展するドローンの将来

現在のロードマップでは、最終段階となるフェーズ4では、超拡張飛行により航空機と同一空域での飛行が示されている。この分野では、ドローンを使って携帯電話などの無線電波の中継を行ったり、エネルギーや社会インフラ関連の産業と融合した活用が期待されている。しかし、そのために解決しなければならない問題も多く、それに取り組むことによって、ドローンの技術革新が進むと同時に、空域を巡る国際的なルールの再設計や整備も加速していくだろう。おそらく、リモコンで操作されているドローンを見る限りは、産業用途というイメージを抱き難いかも知れない。だが、ドローンはこれから確実に進化と革新を繰り返し、21世紀の産業革命の象徴になる可能性を秘めているのだ。

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