佐賀県で夜間の被災現場をドローンで確認する前代未聞の訓練 150人が効果実感

佐賀県で夜間の被災現場をドローンで確認する前代未聞の訓練 150人が効果実感

 夜間の災害対応にドローンを使う訓練が11月11日の日没後、佐賀県武雄市で行われた。緊急消防援助隊による綜合訓練のひとつで、九州沖縄各地区から参加した援助隊と、災害用カスタムドローンを持つ事業者が、暗闇の中の救難者捜索に力を合わせた。参加した150人が、夜間のドローン利用に手応えを実感した。


大規模訓練の〝目玉〟がドローンを活用した夜間偵察

 この訓練は、「平成29年度緊急消防援助隊九州ブロック合同訓練」の、今回の〝目玉企画〟として開催された。緊急消防援助隊は、大災害時に被災地の地元単位の消防機関だけでは対応しきれない場合があるため、全国の消防機関が都道府県単位で編成している救助活動の組織だ。
 九州・沖縄地区では毎年1回、各都道府県持ち回りで大規模な綜合訓練を実施している。今年は佐賀県が会場となり、11,12日の両日に訓練が行われた。九州・沖縄8県から、223隊819人、250台の消防車両が佐賀県に集まった。
 会場となった佐賀県では、ドローンの取り組みに力を入れていることから、今回の訓練で、ドローンを取り入れた訓練「夜間ドローン偵察訓練」を、訓練初日の11日に組み込んだ。
 消防訓練の夜間活動でドローンを用いた大規模な実験は国内では過去に例がない。
 消防では、被災情報があった現場の確認を「偵察」と呼ぶ。何が、どこで、どれほど壊れているのか、救助を必要としている人がいるのかなど、出動の要否や、出動に必要な準備が何かを判断する情報を収集する重要な活動だ。
 今回の訓練のキモは、夜間であることと、陸路では近づけないという想定にある。明かりが乏しく、道路の寸断、家屋の倒壊などで被災地に近づけない状況の中で、ドローンの活用が選択肢として有用かどうかを確認する。
 用意されたドローンはDJIのファントム、インスパイアと、株式会社富士建(佐賀県)の大型ライトを搭載したカスタムドローン「FDH1300」、株式会社島内エンジニア(佐賀県)の暗視カメラを搭載したカスタムドローン「マグピー」だ。富士建、島内エンジニアは佐賀県と防災協定を結んでおり、今回の訓練ではドローンの機体提供とオペレーターで参加することになった。
 夜間訓練には、綜合訓練参加者のうち150人ほどが参加した。当日は訓練の様子を一目見ようと、市民や近隣住民も訪れた。

株式会社富士建:http://www.fjk-co.jp/
株式会社島内エンジニア:http://www.shimauchi-eng.com/

車が見えた、人もいた ドローン照明と暗視カメラの効果実感

出番を待つ島内エンジニアのマグピー(左)と富士建のFDH1300

モニターでドローンから贈られてくる映像をみて、現場の状況を確認する。救助を求める人はいるか。事前に知らされていないだけに、実際の被害現場のような緊張感だ。

 会場は佐賀県武雄市の大同メタル佐賀の敷地。ここで地震が発生したという想定で敷地には崩落現場が再現された。自動車ごと崩れ落ちた橋梁、山崩れで埋もれたトンネル、揺れで折れたビル、倒壊家屋などだ。そこに、車が埋もれ、救助者も助けを求めている。車がどこに、何台埋まっているか、救助を求めている人が、どこに何人いるかは伝えられていない。
 訓練は、参加する緊急援助隊が都道府県ごとにチームを編成して行われた。トンネル、橋梁などチームごとに場所を割り当てられ、各チームが割り当てられた被災地の状況を、ドローンを使って確認する。ドローンのカメラがとらえた映像はモニターに映し出される。各チームはそれを見ながら、被災地の状況を本部に伝える。状況を把握するには、ドローンを動かす必要がある。各チームは、富士建、島内エンジニアリングのオペレーターと連携して、ドローンを進めたり、向きを変えたり、寄ったりしながら、ライトをあてたりしてドローンでの確認に挑戦した。持ち時間は各チーム5分だ。
 スタートした午後5時40分に佐賀県がデモフライト。その後、午後50分から福岡県、熊本県、沖縄県、宮崎県、鹿児島県、長崎県、大分件が順にフライトを実施した。
 「そのままでお願いします」
 「いまの位置で止まればいいですか」
 「いえ、そのまま進んでください」
 援助隊とドローンとの連携は、言葉を決めておくことが重要だ。とくに方向を示す言葉は予め決めておかないと、援助隊の確認したい視点からの映像が得られない。
訓練が進むにつれあたりは暗くなる。前半4チームが終了したところで、後半からは暗視カメラドローン「マグピー」と、大型ライトドローン「マグピー」も使う。モニターの画面に、前半ではぼやけてしか見えなかった埋もれた車や、手を振る人の姿が映し出されると、「救助者、確認。手を振っています」などと報告する声があがった。前半に訓練を終えたチームもモニターをのぞきこみ、「ここに人がいたんだ」などと、ライトを搭載したドローンが近付くことであたりが明るくなることの効果を確認した。
 ドローンを操作した富士建技術部の井手康裕さんは「ドローンを使うことで命を救う可能性が少しでも高まればいいし、そうした使い方があることが分かってもらえるとうれしい」と話した。
この訓練では緊急援助隊がドローンの可能性を感じることが大きなテーマだったが、それとともに、ドローンを扱う事業者と緊急援助隊とのコミュニケーションが大きなテーマとして浮き彫りになった。
 ドローンの有効活用には、それを活用するユーザー事業者との意思疎通ができる関係と、必要な操作に関わる用語の統一を、日常的に図っておくことが重要性だ。それが再確認できる機会となった点、この実験の意義は大きい。
 実は、会場には電線もはりめぐらされている箇所があった。ドローンのパイロットが事前に見渡して把握していたため、フライトはスムーズだったが、援助隊からは、電線が張られていることによる注意喚起は一件もなかった。事故のリスクを回避するためは、ドローン側の事情を、ユーザー側が理解しておくことの必要性も、課題として洗い出すことができた。
 今後の実験は、夜間でないと得られない知見を多く蓄積することができた。今後、これらの知見を整理して、全国の活動に役立てることが期待される。
 今回の訓練を監修した佐賀県企画課の円城寺雄介氏は「絶望するような災害現場の真っ暗闇にドローンでまさに一筋の希望の光を送ることができた。災害時は総力戦で今回の訓練でも、国交省から強力な照明車を、地元建設企業には日ごろの建設現場で培った現場の知恵を工夫を頂いた。災害時にはたくさんの方々が力を合わせることが必要だ。そのためには平時から全国各地で、今回のような連携や訓練を重ねていく必要があると考える」と話している。

大型ライトを搭載したドローンで現場を確認。車の中から懐中電灯で救助を求めている人がいることも確認できる(富士建提供)

大型ライトを搭載したドローンでビル屋上に救助を求めている人がいることが確認できた(富士建提供)

会場に設置された橋梁崩落モデルを暗視カメラで確認。車両も、人も見える(島内エンジニア提供)

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