無人航空機ドローンの産業利用と安全ルール 鈴木真二・東京大学院教授が講演

無人航空機ドローンの産業利用と安全ルール 鈴木真二・東京大学院教授が講演

ドローンに詳しい東大大学院の鈴木真二教授が、産業や技術の展示会、「INTERNATIONAL DRONE EXEPO」で、「ドローンの産業利用と安全ルール」をテーマに講演した。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の理事長もつとめるドローンの第一人者の講演とあって、関心を寄せる業界関係者らが多く集まった。


近代ドローン誕生の背景

 鈴木教授の講演は、ドローンの歴史的経緯から始まった。
 鈴木教授によると、無人航空機の歴史は、1935年に英国で開発された「HD.82」(通称Queen Bee)という無線操縦標的機(ターゲット・ドローン)から始まるという。その後、米国で「TDD1」などが開発され、1986年にはイスラエルが「RQ-2」を、1987年には日本のヤマハ発動機が「R-50」という産業用の無人ヘリコプターを開発している。
 「近代ドローンの誕生は、1995年に運用が開始されたジェネラル・アトミックス社が開発した『プレデター』です。GPSによる自動飛行を可能にし、衛生回線を利用したBLOS(Beyond Line of Sight)運用と、動画の伝送を実現しています」
 現在のドローンにつながる機体が登場したのは、2010年のことだという。この年に、フランスのParrot社が「AR drone」というホビー用のクアッドコプターを発売した。
 「ARドローンは、リチウム・ポリマー・バッテリーを使い、タブレットやスマートフォンでの操縦を可能にし、搭載したカメラによるFPV(飛行操縦者映像)による操縦と、センサーによる安定化を実現していました。このマルチコプターによって、誰でも容易に操縦できるドローンが誕生したのです」。

ドローン利用のロードマップと国際情勢

 鈴木氏の分析によれば、ドローン利用のロードマップは4段階のフェーズに分かれている。
 フェーズ1は、「安全基本飛行」という段階で、目視による日中の飛行で、空域は人口の密集していないエリアが対象となる。その用途は、空撮や測量に農業などになる。
 フェーズ2では、「安全拡張飛行」となり、夜間も含む目視で、建造物の近くでも飛行させる。そして、橋やトンネルなどの点検に警備などで活用されていく。
 フェーズ3になると、「拡張飛行」が可能になり、目視外での遠隔自動飛行によって、電波範囲内での輸送やサンプリングに利用される。
 最終フェーズとなるフェーズ4では、「超拡張飛行」により、目視外や電波範囲外での飛行が可能になり、航空機と同一空域を飛行し、中継などで使われると予想されている。
 「今後のドローンは、約20兆円の規模がある国内の物流トラック市場への波及や、在宅医療や介護サービスの市場への導入に、空飛ぶセンサーとしての新サービス提供、さらには次世代航空管制のパイロットモデルや自動運転システムへの応用など、数多くの波及効果が期待されています」と鈴木氏。
 ドローンを安全に運航するためのルール作りも進んでいる。
 国際運航に関しては、ICAO(国際民間航空機関)が、2015年3月にガイドラインを発表した。国別では米国が2007年に商用の無人機飛行を原則禁止にしたが、2012年にFAA(連邦航空局)の近代化改革法が施行され、2015年には25㎏以下の小型無人機の規則案で、高度200フィート以下による、昼間の目視範囲内での飛行が許可された。一般人の頭上飛行は禁止された。また、ホビー機の登録も開始され、業務用機も登録が義務化されている。
 欧州では、2000年代から国別に規則が制定され、EASA(欧州航空安全機関)による統一化の動向にある。EASAでは、産業の発展と安全の確保を調和させるために、2015年の3月にRisk Based Approachを発表している。これは、ドローンの運航を公開、特例、認証の3つのレベルに分類して、適正な規制を行うことを盛り込んだもので、これに基づき安全な飛行と産業の発展を目指す方向だ。

日本のドローン環境整備に向けた官民協議会

 国内では、2016年12月、政府がドローンの市場育成を目的とした官民協議会を開いた。鈴木教授も、この協議会に一JUIDA理事長の立場で参加している。
 「産業革命の時代に英国では、蒸気自動車の普及を妨害した赤旗法という規制がありました。安全性を重視し過ぎたために、極端な速度規制を強いたことで、英国の自動車産業は発展しなかった、という歴史があります。空の産業革命と呼ばれるドローンに関しては、その技術の進歩が急速なので、現在では想定できないような使われ方も考えられるでしょう。そのため、制度は状況に合わせて柔軟に設計するべきだと考えます。また、技術革新を促進するためにも、実証実験などの取り組みへの柔軟な対応も求められます。そして、安全性に関しても、特定の技術や方法を要求するのではなく、様々な取り組みを総合的に判断する必要があります。さらに、民間企業や民間団体の自主的な取り組みを尊重し、合理的な規制を官民が協力して行うべきだと考えます」。
 ドローンの開発や産業利用が広がる中、日本も特区の制定や航空法の改正など、規制と環境の整備を進めている。小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会では、安全性の確保と産業の発展とのバランスに配慮した検討とルール作りに取り組んでいる。JUIDAも、日本のUAS産業の振興と健全な発展を目指していて、UAS安全ガイドラインの策定やUAS操縦者の養成、資格認定を推進するなど取り組みを活発化させている。

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