ドローンジャパンの「ドローン米」プロジェクト リモートセンシング旭川ルポ

ドローンジャパンの「ドローン米」プロジェクト リモートセンシング旭川ルポ

ドローンを活用した農業で日本の土づくりを世界に発信するドローンジャパン(東京都千代田区)が、2017年度に推進する「ドローン米」プロジェクトを知るため、ドローンジャパンの春原久徳会長と勝俣喜一朗社長が稲作と畑作の生育調査を行うドローンによるリモートセンシングの現場に同行した。


広がるドローンジャパンの「ドローン米」プロジェクト

 ドローンを活用した農業で日本の土づくりを世界に発信するドローンジャパン(東京都千代田区)が、2017年度に推進する「ドローン米」プロジェクトを知るため、ドローンジャパンの春原久徳会長と勝俣喜一朗社長が稲作と畑作の生育調査を行うドローンによるリモートセンシングの現場に同行した。
 リモートセンシングによる農作物の生育調査は、マルチスペクトルカメラを搭載した無人航空機を自動航行させ、センサーにより取得した分光反射測定データから、作物の生育状態・健康状態などを可視化し、生育ムラをなくし収量を上げることを目的としている。
 このプロジェクトは、昨年(2016年)は北海道旭川市で有機農業を行う篤農家・市川範之氏が経営する市川農場(北海道旭川西神楽)を中心に、千葉(佐倉)、茨城(小美玉)の3カ所から開始された。今年は、三重(津)、岡山(鏡野)、新潟(長岡)、富山(滑川)などに広がりを見せている。また、センシング対象品種を米だけでなく小麦、コーン、大豆、かぼちゃにも広げ、北海道だけでも旭川、美瑛、芽室、幕別、北見など5カ所にその拠点は増えた。

ドローンによる「見える化」農業で収量アップへ

 この中で今回リモートセンシングに立ち会ったのは、7月20日と21日の2日間、北海道上川郡の美瑛町にある小麦畑4カ所と西神楽で有機栽培を行っている市川農場の稲作の圃場となった。

美しい美瑛の丘陵地帯=7月20日、旭川市(Mavic Proで空撮)

 最初のセンシング現場は北海道上川郡の美瑛町にある小麦畑。この季節の美瑛の丘陵地帯は、茶褐色に実った小麦畑がパッチワーク柄に織り上げられ、この美しい田園風景を目当てに集まる国内外の観光客で賑わっていた。“親子の木”と名付けられた3本の柏の木にほど近いキタホナミとユメチカラの小麦畑がセンシングの対象となった。
 小麦畑は時折風速10m程の強風にあおられ波打つように揺れていたが、概ね風速は6m程ということでドローンを飛ばすことに決定した。

小麦畑上空をセンシングするSOLO。

 使用機材はマルチローターの「SOLO」と固定翼機の「eBee」を使った。最初にMicaSense社のマルチスペクトルカメラ「SEQUOIA(セコイア)」を搭載したSOLOを飛ばす。SEQUOIAのマルチスペクトル・センサーは、赤外線や近赤外線など4つの反射波長域をそれぞれとらえ記録できるとともに、16MpのRGBの画像データも取得できる。重量は約80グラムと軽いためドローン搭載が可能となっている。
 アプリに飛行高度、飛行速度およびデータのオーバーラップ率を設定、WiFiでSEQUOIAに転送するとSEQUOIAは最適な間隔で自動で空撮を実行する。
 設定済みSEQUOIAを起動させておいてから、キャリブレーションを終えた3D Robotics社のSOLOを離陸させる。あとは着陸まで全て全自動で飛行するため、この間、人は何もすることがない。

 SEQUOIAは60mの高度を、速度7.5m/secで飛行、データ記録はオーバーラップ率80%で撮影、5haの小麦畑を10分間センシングした。SEQUOIAは、1シーンを5つのセンサーで同時に撮影するため、336シーンについて1,680枚のデータを得ることができた。

SOLOの飛行をチェックする春原久徳さん。

右のRGBデータでは判別しにくい生育状態がNDVIデータだと判断しやすい(ドローンジャパン提供)

 同じ小麦畑で今回は固定翼機によるセンシングも行った。
 機体は仏Parrot社傘下のSenseFly社製の「eBee」。機体はEPPフォーム、カーボン構造の2翼タイプで重量630グラムと軽量。約50分間の飛行が可能。前述のSEQUOIAを内蔵できる機体になっている。
 飛行計画を入力し、機体のキャリブレーション終えたら離陸準備は完了。
 eBeeの離陸は、両翼を掴んで数回機体を揺らすと加速度センサーによりモーターが起動、そのまま空中に放り投げるようにするだけなので、滑走路などが要らないため省スペースで飛ばすことができるというメリットがある。

固定翼機eBeeは、勝俣さんが上空に向かって放り投げると(写真下)、センシングの開始地点に向かって自動で飛行していった。手前のドローンは、ebeeの離陸を動画撮影する市川範之さん操縦のInspire2。

eBeeに内蔵されたSEQUOIAが見える。

 フワッと機体が浮くと、後は決められた航路に向かって飛び、自動航行に移行してくれる。飛行高度は120m、速度は9.4/secで34haの小麦畑の上空を30分ほど飛行した。SEQUOIAも機体に連動し、撮影できる機体の姿勢に対応するため正確なデータ取得が可能だ。SOLOに比べると長時間の飛行が可能となるため、広範囲のセンシングには最適だ。
 着陸は胴体着陸となるため、機体への衝撃を考え、このフライトでは離陸させた付近の小麦畑の中に着陸させた。

 このあと3カ所の小麦畑をSOLOによるリモートセンシングをしたが、午前中で予定通り終了させる素早さだった。
 勝俣さんによるとデータは翌日までに解析され、小麦の生育状態や乾燥度などが分かるという。小麦の生育状態を可視化することで、追肥する箇所などが一目瞭然となる。収穫時期も逃す恐れがなくなるという訳だ。

 美瑛の農協ではこれまで衛星画像を使い、広い範囲で同様の情報を取得していたが、天候によるデータ取得タイミングのズレ、データ解析までの時間がかかるといったデメリットがあった。ドローンだと欲しい時にデータ取得でき、データ解析時間もかからないなどメリットがある。さらに広範囲を撮影して必要な部分を抜いてくる衛星と違い、必要な範囲を低高度で撮影するドローンは、データが高精細で、細かい部分まで分かるのは大きい。農家にとって収穫時期の決定は死活問題となっている。これまでは広い畑の一部を見て、小麦を手で揉んで乾燥具合を経験から判断していたわけで、今後はデータによる管理が一層進むと考えられる。

SOLOの離陸を見守る勝俣さん。

ドローンを使った無農薬有機栽培で健康な米作りを実践する市川農場

農薬や化学肥料に頼らない稲作がおこなわれている水田をセンシングするSOLO。稲の間にミズアオイが繁茂しているのがわかる=7月21日、旭川市西神楽の市川農場

 篤農家・市川範之氏が経営する市川農場は、旭川市街から車で30分程の場所にある。大雪山系の清冽で豊富な水を使った米作りは慣行農業が中心だが、一部の水田でドローンを使った農薬や化学肥料に頼らない有機栽培を行っている。
 市川さんに「有機栽培の水田と慣行農業による水田とは一目瞭然です」と言われので、確かめると、一見してその違いが分かった。まず見た目の様相が違う。
 農薬を使っている水田は、稲が整然と育ち、水田の中だけでなく周囲の畦道にも雑草をほとんど見出すことがない。一方農薬を使わない水田は稲の間に稲とは明らかに違う雑草が繁茂し、一見、雑然としているものの、何か“自然”な印象を受ける。実は稲の間の草は雑草とはいっても、きれいな水にしか育たない「ミズアオイ」であるという。ミズアオイは戦前なら何処の水田にも見られたが、今や環境省のレッド・データ・ブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。現在では希少な植物で、市川農場では8月ころ青紫の美しい花をつけるという。有機栽培を行っている田圃の健康のバロメーターともいえるだろう。

有機栽培が行われている水田には、健康な証拠として絶滅危惧種Ⅱ類指定のミズアオイが繁茂している。

 ドローンジャパンでは2年前から市川農場でドローンを使い、田圃の健康状態などをデータで見える化して、追肥のエリアや行うタイミングを調べている。午前中、美瑛の小麦畑で行っていたのと同様に春原さんと勝俣さんはSOLOとeBeeによるリモートセンシングを行った。SOLOは有機農業を行っている圃場を中心にセンシングし、eBeeは市川農場の広範囲を照査した。
 センシングの手順、方法については小麦畑と同じなので説明は省略する。

SOLOのキャリブレーション、経路の入力、あとは自動で飛ばすだけ。

市川農場のセンシング結果(ドローンジャパン提供)

ソバ畑からeBeeを離陸させる。

ソバ畑に着陸したeBeeを回収する勝俣さん。

 また市川農場ではドローンを市川さん自身が操縦して、木酢液散布や追肥などを行っている。今回は市川農場オリジナルドローンで、有機栽培を行っている稲に、害中対策に木酢液を撒くというので見学させてもらった。
 ドローンに限ったことではないが農薬を散布するとなると、散布者はゴーグルとマスクの着用が必須で、暑くても素肌を出すことはできない。真夏の作業でも長袖、長ズボンにゴム引きの雨具にゴム手袋着用と完全防備といった姿となる。木酢液散布では、人体に有害ではないためマスクもゴーグルも不要で、皮膚をカバーすることもない。ヘルメットだけは安全のために着用している。

木酢液を散布する市川農場オリジナルドローン。

市川農場オリジナルドローンを操縦して木酢液を散布する市川範之さん。安全のためヘルメットを着用しているが、農薬散布とは違いゴーグルやマスクはしていない。

 市川農場ではドローンによるデータを活用して、ドローンを使った追肥や害中対策を実践している。有機栽培の水田は畦道にもミズアオイが茂り、ドジョウやタニシも生息しているという。
 市川さんは「きめの細かい栽培から生産される米は、品質、味ともに日本の財産です。ドローンが全てではないが、生態系を守り、農薬・化学肥料に頼らない農業で、自然調和を心がけた田んぼを作り、安全でおいしい米を届けたい」と日本の食へのこだわりについて話してくれた。

ドローン米プロジェクト
ドローン米の購入はコチラから

この記事のライター

関連する投稿


日本の農業リモセンをリードする「DJアグリサービス2018」が始動

日本の農業リモセンをリードする「DJアグリサービス2018」が始動

農業の「見える化」にドローンを活用したリモートセンシング(リモセン)サービスを提供するドローン・ジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:勝俣喜一朗)は、来年に向けて「DJアグリサービス2018」を発表した。


ドローン米プロジェクト「リモートセンシング勉強会」技術×農業の今を知る

ドローン米プロジェクト「リモートセンシング勉強会」技術×農業の今を知る

ドローン米の初回購入の特典として、「農業リモートセンシング勉強会」が9月26日、大手町の産経新聞社で開催された。最先端で技術と農家をつなげているドローンジャパン社代表取締役会長の春原久徳氏が、農業リモートセンシングの最新情報や成果などを紹介した。


「ドローン米とササミの包み揚げ」って・・・ ドローン使って栽培した高級米だって

「ドローン米とササミの包み揚げ」って・・・ ドローン使って栽培した高級米だって

ドローンを活用した有機栽培で生産された高級米が、東京・池袋の料理店japanese kitchen HITOHANAで食べられる。


産業別ソリューションを強化するsenseFlyの360シリーズ

産業別ソリューションを強化するsenseFlyの360シリーズ

ドイツのベルリンで9月26日から開催されるINTERGEO 2017に向けて、スイスのsenseFly社は業界別ソリューションのsenseFly 360シリーズを発表した。


ドローン技術を活用、農薬に頼らない有機農法で栽培した「ドローン米」販売中

ドローン技術を活用、農薬に頼らない有機農法で栽培した「ドローン米」販売中

 ドローン専門サイトのドローンタイムズでは、ドローンジャパン株式会社(東京都千代田区九段)が推進する「ドローン米」プロジェクトの考え方に賛同し、2016年度に旭川市の篤農家・市川範之さんが経営する市川農場で有機栽培により収穫された「ドローン米・北海道産ゆめぴりか」のパック米(包装米飯)を産経ネットショップで販売中。


最新の投稿


VIEWNが『JUN OKAMOTO』と「ドローンフライトのためのシャツ」制作

VIEWNが『JUN OKAMOTO』と「ドローンフライトのためのシャツ」制作

「ドローンカルチャー」を提案するVIEWN(ビューン)が、 ファッションブランド『JUN OKAMOTO』とコラボレーションをして、 ドローンフライトと様々な撮影シーンを想定したデザインしたシャツを制作。 VIEWNのオンラインストアで販売。


祖谷のかずら橋(国指定重要有形民俗文化財)ドローン 空撮

祖谷のかずら橋(国指定重要有形民俗文化財)ドローン 空撮

かずら橋は国指定重要有形民俗文化財です。


大山千枚田を空撮

大山千枚田を空撮

千葉県にある棚田・大山千枚田


テラドローンがLGU+と韓国初 ドローン管制システムを事業化

テラドローンがLGU+と韓国初 ドローン管制システムを事業化

テラドローン株式会社(東京都渋谷区)は、 韓国の通信企業LG U+(韓国ソウル)と協業し、 韓国初のクラウド型ドローン管制システムを事業化した。


NTTデータ、ドローン運航管理用ソフトウエアパッケージ「airpalette® UTM」の提供開始

NTTデータ、ドローン運航管理用ソフトウエアパッケージ「airpalette® UTM」の提供開始

~愛媛県の原子力防災訓練で利用、ドローンによる避難経路の被災状況の確認に成功~