300機のドローンを群制御するIntel Shooting Starの最新テクノロジー

300機のドローンを群制御するIntel Shooting Starの最新テクノロジー

ハウステンボスの夜空を彩った300機のIntel Shooting Starは、現時点で世界最高のドローン制御テクノロジーを実現している。その開発の背景について、ライトショーのために来日したゼネラルマネージャーのNatalie Cheung(ナタリー・チョウ)氏に聞いた。


Intel Shooting Starが創り出す新しい空のエンターテイメント

ゼネラルマネージャーのNatalie Cheung(ナタリー・チョウ)氏

 ナタリー氏によれば、Intel Shooting Starによるドローン・ライトショーは、3種類のエンターテイメントを実現する。一つは、光のアートショー。新しいスタイルの物語を空に描けるという。もう一つは、新しいデジタル花火。法律などで花火が禁止されている国でも、Intel Shooting Starならば花火に代わる夜空のエンターテイメントになる。そして三つ目が広告。二次元のビルボードに代わる三次元のロゴを夜空に照らし出す。「インテルは、これまでのライトショーで、これら三つの要素をすべて含んだエンターテイメントを実現してきた」とナンシー氏は振り返る。
 しかし、ハウステンボスで日本初となるライトショーを開催するにあたり「なぜ、ディズニーランドやユニバーサルスタジオではないのか」と疑問を抱いたという。そこで、ハウステンボスでは準備のために、今年の2月にナンシー氏を日本に招いた。そのときに「ロボットがおもてなしをする『変なホテル』に泊まって、LEDによるイルミネーションがふんだんに使われている様子を見て、ハウステンボスこそがIntel Shooting Starのライトショーに完璧な場所だと確信した」という。そしてハピロボの富田直美氏とロケハンを行い、金属などの電波干渉が少なく、GPSの受信が安定していて、万が一ドローンが墜落しても安全な地域、という条件に合った場所として、ハーバーサイドが選ばれ、高さ150mに120m×120mの飛行空域が決まった。

330gに凝縮されたドローンの最新テクノロジー

330gの最新モデルを手にするNatalie Cheung(ナタリー・チョウ)氏

 今回のドローン・ライトショーのために搬入された360機のIntel Shooting Starは、初代から数えて三世代目になる最新モデル。詳細な技術情報は公開されていないが、重量は330gと超軽量で秒速3mの飛行が可能。機体を制御するフライトコントローラーは、インテル社が2016年に買収したドイツのAscending Technologies(アセンディング・テクノロジー)社が開発したTrinity(トリニティ)のサブセット版。飛行中の機体同士は、1.5mまで接近できる。また「二層のジオフェンスによる安全策」が施されている。「一層目のジオフェンスにドローンが接近すると、自動的にそこから離れるようにプログラムされています。もしも何らかの要因で離れることが不可能な場合は、モーターを切って落下します」とナンシー氏は説明する。二層のジオフェンスは、機体の上下左右の全方位に張られていて、ライトショーの安全性を支えている。仮に墜落しても、330gの超軽量でプロペラもガードされているので、下に人がいても怪我をする心配はほとんどない。
そして最も注目すべきテクノロジーが、300機を完璧に飛行させる群制御システム。このシステムは非公開となっているが「通信電波は2.4GHzで、インテルの送信技術を使っています。飛行は完全な自動化により、パイロットは飛行開始の実行と緊急時に備えて待機しているだけです。またパイロットが病気になった場合を想定して、予備の人員による二名の体制でオペレーションしています」とナンシー氏。つまりIntel Shooting Starの飛行は、あらかじめプログラムされた内容にしたがって自動操縦されるので、飛行中にパイロットがジョイスティックなどを操作する必要はない。緊急時にはドローンを墜落させる命令を出すだけでいいという。

きっかけは100機のドローンでインテルのロゴを描こうと思い立ったこと

Intel Shooting Starを手にするハピロボの富田直美氏とインテルのNatalie Cheung氏

 大学時代にコンピュータや機械のエンジニアリングを専攻し、修士号を取得したナンシー氏は「三次元の空間を飛行するドローンの複雑さに魅力を感じた」と話す。「ドローンでシンプルかつビューティフルな光のアートを描くためには、その裏側でオペレーションとハードウェアとソフトウェアを緻密に合わせる複雑な作業が必要です。それは、これまであったシステムを変えていく作業であり、そこから新しい産業を切り開いていくことにつながります」とドローンに取り組む魅力を語る。そしてIntel Shooting Starが誕生したエピソードも紹介してくれた。「きっかけは、『100機のドローンでインテルのロゴを夜空に描いてみたら面白いよね』という何気ない会話でした。その後に、インテルが買収したAscending Technologiesと協力して、100機のドローンを制作し、プライベートなイベントで夜空にロゴを描いたのです」とナンシー氏。この100機のドローンは、ギネスブックにも登録され、世界中から注目を集めた。それから現在に至るまで、すでにナンシー氏のチームでは、世界で100回を越えるドローン・ライトショーを展開してきた。その間に機体は第三世代へと進化し、ドローンを制御するソフトウェアも発展してきた。「初期のライトショーでは、ドット絵を描くようにIntel Shooting Starの位置や発色などを一つ一つ設定していました。しかし現在では『このような絵を描きたい』というスケッチを入力するだけで、Intel Shooting Starの飛行からLEDの点滅までをアルゴリズムにより自動で作成できるようになりました」とテクノロジーの進化についてナンシー氏は説明する。
 インテルでは今後もIntel Shooting Starによるドローン・ライトショーを各国で展開していくと同時に、そこから得られた最新テクノロジーを元に、新しい産業の創出や社会課題の解決などに寄与していく考えだ。ハウステンボスでのドローン・ライトショーは8月5日が最終日。世界最高のドローン群制御を目にできる日も、あとわずかだ。

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