KDDI スマートドローンの仕掛け人 ==松木友明氏==(1)

KDDI スマートドローンの仕掛け人 ==松木友明氏==(1)

KDDIがドローン事業を加速している。2016年12月にKDDIはゼンリンやプロドローンと共同で、スマートドローン構想を発表し、2017年2月には長崎のハウステンボスでスマートドローンを活用するアイデアソンを開催した。この一連のプロジェクトを仕掛けてきた松木友明氏に聞く。


3年前からドローンの可能性に注目し独自にリサーチ

KDDI株式会社 商品・CS統括本部 商品企画部 商品戦略1グループの 松木友明 課長補佐

 松木友明氏は、KDDI株式会社の商品・CS統括本部 商品企画部 商品戦略1グループの課長補佐を務める。松木氏は、KDDIで商品企画に携わり、デザイン性に優れたインフォバーなど注目度の高い携帯電話やスマートフォンを創りだしてきた。その松木氏がドローンに興味を抱くようになったのは、約3年前。きっかけは「当時、首都大学東京で無人ヘリ(UAV)を研究されていた泉岳樹助教との出会い」だったという。
 以前に本サイトで紹介した小関氏も、泉助教を通してドローン関連の人脈を広げ、プロドローン社などが協力した「かもめプロジェクト」にも参加している。松木氏も同様にドローンの情報や人脈を広げていったが、KDDIとして取り組むには大きな課題があった。それは「リサーチをはじめた当初は、携帯電話の周波数が免許的な制限で利用できなかったのです。ドローンと携帯電話網を利用した通信は、とても相性が良いと考えていたので、電波を利用するための制限が課題でした」と松木氏は振り返る。
 その課題をクリアしたきっかけは、2016年の7月に総務省が「無人航空機における携帯電話等の利用の試験的導入」のために「実用化試験局免許」を発行すると発表したこと。この試験用免許の発行をきっかけに、KDDIではスマートドローン・プロジェクトを推進していった。そして「商用ドローンを安全に遠隔で長距離を飛ばすためには、自律飛行に向けた機体の開発と、運行管理機能による制御、そしてそのための3次元マップなどが必要になる」と考えて、KDDIとしてプロドローンに出資し、ゼンリンと提携した。3社の役割分担は、図のようになっている。

スマートドローンの各社の開発内容

 そして2016年7月に「実用化試験局免許」を申請したKDDIでは、12月に「スマートドローン構想」を発表するまでに、プロドローンの機体にクアルコム製の通信モジュールを装備するなど、準備に取り組んできた。

通信モジュールによる自律飛行に向けた開発を加速

 KDDIのスマートドローンが、他の通信事業者が行ってきた実証実験と異なる点は、機体を制御するための通信方式にある。過去に行われた実証実験では、WiFi通信で飛行するドローンに対して、スマートフォンのテザリングというWiFi無線の中継機能を組み合わせて遠隔からの操作を実現していた。それに対して、KDDIのスマートドローンはプロドローンの機体に携帯電話網との通信機能を備えたクアルコム製のモジュールを組み込んでいる。つまり、ドローンそのものがスマートフォンの通信機能を備えた機体になる。
 松木氏が3年前にドローンに注目した理由は、まさに「空飛ぶスマホ」の実現にあった。そのためには、テザリングのような擬似的な中継機能ではなく、ドローンそのものがスマホに匹敵する通信機能を装備して飛ばなくてはならない。その理想を実現するためには、「飛行の安定した機体を開発できるプロドローンの協力が必要になる」と判断したという。
 通信モジュールを組み込んだドローンを開発する一方で、KDDIでは飛行制御システムの開発にも取り組んでいる。
 「まだまだ、商用で提供できるレベルではないですが、今後も実験を繰り返して、LTE経由でドローンを直接操作する飛行制御システムを開発していきます」と松木氏。"空の3次元地図"を活用して自律飛行する「スマートドローン構想」は、まだスタートしたばかりだが、KDDIでは農業や測量などのB2B向けのトータルソリューションを整備していくだけではなく、B2B2Cというコンシューマ向けサービスにも取り組んでいる。次回はその具体例について紹介する。(つづく)

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